人間の「悪」の部分に潜む心理効果まとめ

世間的には、悪=「ダメなこと」「許されないこと」という認識で捉えられがちですが、人間の心には、必ず「悪」の部分が潜んでいます。

そんな人間が持っている「ダークサイドの部分」に潜んでいる、悪の心理効果をまとめました。

目次

気分一致効果

機嫌がいい時にはいい情報に目が向きやすくなる、また思い出しやすくなる。
機嫌が悪い時には悪い情報に目が向きやすくなる、また思い出しやすくなる。という効果。

(例)
イライラしながら街を歩くと、緊急事態宣言の最中にも関わらず県外ナンバーの車を見つけ「自粛しろよ」と更にイライラする。
機嫌がいい時に街を歩くと、緊急事態宣言の最中にも営業しているお店を意気に感じ、つい買ってしまう。

夜中のテレビ通販のアナウンスとか、ジャパネット塚本さん、というかテレビ番組全般、非常にテンションが高いですよね。あれが当たり前のように思いますが、視聴者に明るく楽しい印象を与え、数字を取るための一種の心理効果です。

損失回避

利益の獲得より、損の回避を好む傾向。人間はとにかく損をしたくない生き物。

(例)
(A)確実に1万円を貰える。
(B)50%の確率で2万円を貰えるが、50%の確率で0円になる。
どちらかを選べとなった時、大体の人が(A)を選びます。

一方で、
(C)確実に1万円を失う
(D) 50%の確率で2万円を失うが、50%の確率で0円になる。
趣旨が利益から損失に変わると、多くの人は(D)を選ぶ。

結局どちらも1万円を得るか失うかどちらかなのに、人間は少しでも「損をしない可能性」にかけたい。
1万円を得る喜びと、1万円を失う悲しみは、決して同義ではない。

普通の外食では、もとを取ろうとする人はいません。というかメニューが決まっているから、取りようがありません。しかし「食べ放題」となると

「いっぱい食べればもとが取れるかもしれない」
「もとが取れるにも関わらず、食べなかったら損をする」

という、損失回避の心理を引き起こします。食べ放題ではお店側が損をすることはないのに、お客さんに損を感じさせない。心理効果を上手く使ったビジネスですね。

サンクコストの誤謬(ごびゅう)

今まで投資した、二度と戻ってこないコスト(サンクコスト)が無駄になることを恐れ、これまで行ってきた行為を正当化するために、非合理な判断や行動を行ってしまうこと。

(例)
漫画「インベスターZ」にあった話。ある映画を開始10分で「つまらない」と判断した。

ここで「映画がこの先面白くなる可能性」と「中断した場合に得られる110分の価値」を比較して、このまま見続けるか、映画館を出るか、を判断するのが合理的な判断。

しかし「1900円払っちゃったから」「10分見てしまったから」という「サンクコスト」にとらわれて、残り110分を見続ける、という非合理な判断をしてしまう。

例えば5,000円の食べ放題を例にすると、支払った5,000円はどれだけ食べても食べなくても、もう返ってこない「サンクコスト」。にも関わらず「もとを取ろう」と戦場に向かうソルジャーのような気迫で食べ放題に挑む方もいますが、実際、最終的に金銭的な損得には全く影響していません。

正常性バイアス

何らかの被害が予想される状況になっても、正常な日常生活の枠組みの中で解釈してしまい、事実を認めず、都合の悪い情報を無視する傾向。

人間は自分の知識にしがみつき「まだ大丈夫っしょ」とリスクを過小評価してしまいがち。

(例)
1982年7月の長崎県長崎市で発生した集中豪雨。1時間187ミリの雨量を観測しました。17時には洪水警報が出たものの、市民は連日の大雨の影響で「またか」程度に受け止めていました。

その影響から、21時を過ぎても避難した人は13%ほど。危険地域住民の大半が避難しなかったため、大勢の方が土砂災害に巻き込まれてしまいました。

避難しなかった方々は後の聞き取りで「家にいても大丈夫だろうと思った」「しばらく様子を見ようと思った」と話しているようです。

日本に住んでれば安泰、会社が潰れることはない、311並みの大地震が来ることはそうそうない、自分はコロナに感染しないだろう…など。

人は、自分が想像、想定できない事態を甘く見がちです。心配しすぎてもキリがありませんが、少しは疑いの心を持ったほうがよさそうです。

ナイーブ・シニシズム

「自分は誰かの役に立つことが多いけれど、迷惑をかけるようなことはしていない」と考えるバイアス。

(例)
いいことが起きた時は「俺が頑張ったから」。
悪いことが起きたときは「お前のせいだ!」。
上記は、ナイーブ・シニシズムの傾向が強い人。

簡単に言うと、ナイーブ・シニシズムの傾向が強い人は、自分の非を決して認めません。

「自分は相手の意見を理解しようとしているのに、相手は自分の好き勝手な意見を言っている(正論であろうと)」と考えてしまいます。

シニシズムとは、冷笑的な態度、皮肉な言葉、といった意味。「正論で世の中が動くわけねーだろ、言うだけだったら誰にでもできるんだよ、現実見ろよ」みたいな意見はまさしくシニシズム。

ナイーブ・リアリズム

「自分だけはバイアスにとらわれることなく、物事を客観的に見ているぜ」というバイアス。

「自分は客観的に現実を認識できているんだから周りもそれができて当然」と考えてしまうあまり、他人が自分の認識とズレてると「あいつの考え方は不正確で歪んでいる」と感じてしまう。

(例)
自分の判断を正当化するあまり、
「自分が投票した候補者が選挙で落選したのは、表が不正に操作されていたからだ」
「コロナウイルスに自分はまだ感染してないので、世間は過剰に反応しすぎだ」
みたいな陰謀チックな仮説を本気で信じてしまう。

つまり「自分はバイアスにとらわれていない」という考え方自体が、既にバイアスにとらわれている証拠でもあるわけです。

心理的リアクタンス

選択する自由を奪われた上で他人から強制されると、たとえそれが良い提案であっても反発、反抗してしまう傾向。

(例)
漫画を読み終わったら勉強しようと思っていたのに、親から「勉強しなさい!」と言われて一気にやる気がなくなった。また、仕事の順番を決めてやっているのに「こっちの仕事は今どうなっているんだ!」と怒られ、一気にやる気がなくなった。

医者から「ラーメンは絶対に食べないで下さいね」と言われると、余計に食べたくなってしまう。

ダチョウ倶楽部のネタではありませんが「押すなよ」と言われると押したくなるのも、心理的リアクタンスによるものです

結果バイアス

ことわざの「結果良ければ全て良し」にあるように、結果が出るまでのプロセスはすっぽかし、結果のみで判断してしまう傾向。

(例)
ビジネスの世界において、勝率が低いギャンブルに勝利した経営者は「先見の明がある」と評価される。「勝率が低いギャンブルというリスクを取ったこと」は批判されない。

逆に挑戦しないで利益を得られなかった経営者は「慎重に行動した」とは評価されない。「凡庸(ぼんよう)で臆病な経営者」と批判されがち。

炎上しているニュースに対してやたらとヤジを飛ばす方々はこの傾向にあると思います。SNSで広まった「結論」だけに飛びつき、それが本当に正しいことかどうかを調べることは、面倒だからしないのです。

確証バイアス

自分に都合のいい情報ばかり集めて、都合の悪い情報を無視する傾向。自分の知識が正しいと思いたいがゆえ、自分の知識を補足してくれる書籍や雑誌、WEB情報ばかりに目を通す。

逆に、自分の知識に反する情報は「自分を否定するもの」と判断し、遠ざける傾向にある。

(例)
血液型の話などがそう。

「A型は几帳面、O型は大雑把という世間のイメージ」を信じこみ、几帳面な人に対して「A型でしょ?」と聞いて、実際その人がA型なら、よりその世間のイメージを深く信じ込む。

逆に、その人がA型じゃなかったら「たまたま」と捉えて終わり。

そもそも「A型は几帳面、O型は大雑把という世間のイメージなんて当てにならない」という情報に目を向けようとはしない。

人間はみんな、自分にとって都合のいい情報だけを集めているものです。

「そんなはずはない、そんなワケはない」と、自分が今持っている知識を「アップデートしない」人は確証バイアスにとらわれています。気を付けましょう。

バランス理論

対人関係において、3者間の関係のバランスを保とうとする傾向。

(例)
ある事象(■)について、AさんとBさんで話をしていたとします。
■についてAさんもBさんも「良い」と評価したら、AさんとBさんの関係は良好になります。
■についてAさんもBさんも「悪い」と評価したら、AさんとBさんの関係は良好になります。
■についてAさんが「良い」、Bさんが「悪い」と評価したら、AさんとBさんは仲良くなれません。

つまりAさんがBさんと仲良くしたいなら、Aさん自身の評価を変えるか、Bさんの評価を変えさせるか、どちらかとなります。

「好きの反対は無関心である」とは言いますが、本当にそのとおり。「好き」や「嫌い」は「興味を持っている」という観点で見れば表裏一体。関心がなければ「良い」も「悪い」もありません。

■について「良い」と言っている人の前で「悪い」と評価したら、せっかくの人間関係に風波が立ちます。人はそれを分かっているので、まるで互いの秘密を表有するかのように陰でコソコソと「嫌い」を共有し合い、仲良くなるのです。

バラ色の回顧

人間は過去の出来事について、都合の悪い情報だけは削ぎ落とされ、逆に都合のいい情報だけを覚えている傾向があります。

(例)
同窓会などに参加すると昔話に花が咲き「いやー、昔はよかった」という結論に至りがち。昔にもよくない出来事はたくさんあったのに、バラ色の回顧によってそれが完全に削ぎ落とされているいい例。

また、大人同士で喧嘩になった際、仲裁者が「時間が解決してくれる」と言って宥めるのはまさに「バラ色の回顧」があるから。

これまでより家事がずっと楽になる家電があるにも関わらず「もともとそんなに辛くない」とか「私は苦労してやってきたんだから(あなたも同じ苦労をしなさい)」などと言って、毛嫌いするお年寄りの心理もこれに近いものがあります。「手作業でやる家事」にバラ色の思い出があるのでしょう。

人間は思ったより「過去のこと」を「過去のまま」で記憶してません。

類似性

環境、容姿、態度など、似た者同士と一緒にいると心地よさを感じて好意的な人間関係を成立させる傾向。

(例)
「ジムに通ったけど3日坊主だった」という友人の暴露話に対し「私も~!」と共感すれば、互いに親近感を抱き合い、距離がぐっと縮まる。

言い方悪いですが「クズ」や「ゲス」な一面をさらけ出している人に対しては多くの人が「私と同じだ」と共感しやすく、「親近感」を抱くものです。出川哲朗さんとかがいい例です。

逆に「完璧な人」「成功者」という類の人に対しては、多くの人が「私とは住む世界が違う」と感じやすく「親近感」という点では不利になります。

身元の分かる犠牲者効果

被害者が「不特定多数」より、「特定可能な個人」の方が、強い反応を示す傾向にあります。

つまり「人数の多さ」より、「たった一人のストーリー」に人は興味を惹かれます。

(例)
新型コロナで亡くなられた方の人数は日々更新されるが、国民の間に危機感はそこまでなかった。
しかし志村けんさんが亡くなられた時、一気にコロナに対する恐怖や怒りの感情が、国民の間に強くかき立てられた。

人間の感情は「数字」ではなかなか動きません。具体的なストーリーを見て「頭」や「手足」よりも先に「心」が先に動くもの。

なので◯万人という数字より、一人のストーリーに焦点を当てるほうが、人の心、感情、気持ちは動きます。

自己充足的予言

ある「予言」通りの結果が起こると「予言が当たった」ように錯覚する傾向。

そもそも、その結果は人が無意識のうちに「予言を実現するよう」に行動した結果だった可能性もあり、「自ら予言を当てに行っている」とも言えます。

(例)
朝起きて「今日はいい日だ」と感じると、良い事象ばかりに意識が向きがち。
逆に「今日はダメな日だ」と感じると、悪い事象に意識が向きがち。

「部下はもう、みんなやる気がない」と感じると、それに合致する情報ばかりに目が行き「やっぱり私の見立ては正しかった」と判断する。

この傾向にある上司から一度目をつけられたら大変です。いいことしてもスルーされ、悪いことばかり着目されますからね。

また、占いを信じた人が行動を変えたことで、結果的に占いが当たってしまうという事もあります。占いというビジネスはある意味、バイアスをうまく利用しているとも言えますね。

バーナム効果

誰にでも該当するような、曖昧で一般的な記述を、あたかも自分だけ当てはまるものだと捉えてしまう現象。

(例)
「あなたは他人から好かれたい、称賛してほしいと思っており、それにも関わらず自己を批判する傾向にあります。」
「弱点を持っていても、あなたは普段それを克服することができます。」
「あなたは使われず活かしきれていない才能を、かなり持っています。」
「一見規則正しく自制的ですが、内心ではくよくよ悩んだり、不安になったりする傾向があります。」

「自分に当てはまっている」と思われるかもしれませんが、いずれも一般的な内容ばかり。
これはバートラム・フォアという方が、1948年に行った実験なのだそう。
学生たちに、上記がどれくらい当てはまっているかを0~5で評価させました。

結果、平均点は4.26と、ほとんどが当てはまると答えていたそうです。

これも占いにありがち。人々が占いに熱狂するのは「人々の現状の不満にうまく応えているから」なのかもしれません。

同調バイアス

何か行動を選択する際に、まずは他人の行動を観察してから、大勢が選んで知るのを同じ内容を選ぶ傾向。

強いこだわりがない場合、選択が不安な場合、とりあえず周囲に合わせようとする。「皆と一緒だと安心」という心理です。

(例)
大きな地震が起き、避難警報が出された。にも関わらず周りの大勢の人が誰も動かないと
「逃げるほど大変な事態なら周りの人たちが大騒ぎするはず。でもみんな静かだから大丈夫だろ。」
と、とりあえず周りに合わせようとする。

iPhoneや、鬼滅の刃などがいい例。ヒットするものには様々な要因がありますが「多くの人に選ばれているから」という理由で「私も選ぼうかな」という気持ちが働き、ヒットに更に拍車をかける傾向にあります。

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