【保存版】マーケティングの心得・考え方

出典:USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門|森岡 毅 (著)|KADOKAWA/角川書店

目次

マーケティングの「本質」

マーケティングの本質は「売れる仕組みを作る」こと。

簡単にいうと「放っておいてもお客さんが商品をバンバン買ってくれる状態を作る」ことです。

そのためには大切なのが「消費者と商品の接点をコントロールする」ことです。

「消費者と商品の接点」とは何ぞやというと、主に下記3つです。それぞれ解説します。

  • 消費者の頭の中
  • 店頭(買う場所)
  • 商品の使用体験

消費者の頭の中

認知度の獲得

まず全てのマーケターが最も前のめりで頑張るのが「認知度の獲得」です。

理由は人間は知らないものに対して購買行動を取りにくいから。知らないブランドより知ってるブランドの方が当然、安心ですよね。

また、人間は忘れる生き物。せっかく知ってもらっても、その認知度を何もしないとお客さんはすぐ忘れます。

限りある予算の中で「どう認知度を獲得するか」、そして「その認知度をどう維持するか」。

日々、マーケターは試行錯誤をしています。

ブランド・エクイティー

次にマーケターが頑張るのが「ブランド・エクイティー」の構築です。

これは簡単にいうと「お客さんが思う、ブランドに対するイメージ」

例えばレクサスと聞いたら「L」のエンブレムや、フロントのあみあみ(スピンドルグリルというらしい)、お金持ちのイメージ、が思い浮かびますよね。これがレクサスのブランド・エクイティーです。

アップルと聞いたら、りんごのマーク、シンプルで上質に仕上がった製品、みんな使ってて定番、などが思い浮かびますよね。これがアップルのブランド・エクイティーです。

ラーメン二郎と聞いたら、シンプルな黄色い看板、富士山のようなビジュアルのラーメン、狭い店内、常に行列、とかですよね。これがラーメン二郎のブランド・エクイティーです。

この「ブランド・エクイティー」をいい方向に持っていく活動を「ブランディング」と呼びます。

ブランド・エクイティーの構築=ブランディング。そのため「ブランディング活動もマーケターの本質」といっても過言ではありません。

ブランド・エクイティーは「資産」です。これを大きく強いものにできれば最強の「目に見えない資産」となり、一気に競合との差をつけることができます。

そのためマーケターは日々の試行錯誤を通じ、消費者の心にコツコツ「信用貯金」を積み重ねています。

店頭(買う場所)

「十分な認知」と「強固なブランド・エクイティー」を作れたからといって、必ずしも購入に結びつくとは限りません。

その原因として「消費者が商品を購入する現場」があります。

例えばいくら支持されていても品切れが続けば、別のブランドのものが選ばれることになります。

また都心の実店舗でしか扱ってない商品だと、わざわざお店に足を運んでくれる地方の人は少ないはずです。

よりものが売れるようにするには「店頭」を制する必要も出てきます。

店頭を制するのに必要になってくるのが、下記3つの要素です。それぞれ解説します。

  • 配荷率
  • 山積み
  • 価格

配荷率

店頭を制するうえで最も大切なのがこれです。

配荷率とは、どれだけ多くの店頭で扱われているのかの割合のことです。

例えばドラッグストアが100店舗あった場合、60店舗で取り扱いしてるなら配荷率は60%です、といった感じです。

お客さんが買おうと思っても、その商品を買える状態でないことには、売上は出ません。なので多くのマーケターは、配荷率の向上に向けて、懸命に取り組んでいます。

スーパー、ドラッグストア、ホームセンターのような小売店に依存している業界もあれば、家電だと大型量販店を土俵にしている業界、インターネット通販に注力している業界など、ビジネスモデルは様々です。

また、ドラッグストアや家電量販店では、限られたスペースの中で、少しでもお客さんの目に付きやすいポジションを獲得するための戦いが繰り広げられます。マージン率で勝負するのか、小売の客単価向上に貢献するか、売上の大きさで勝負するのか…。

とはいえ結局、最大の武器になるのは「お客さんに強く求められる状態」

お客さんが強く求めるブランドであれば、流通にとっては売上を伸ばす理由になるし、それを取り扱っていない小売店は、お客さんからの指示は得られないものです。

山積み

山積みとは、下記のようなもの。

ドラッグストアではマスクが、スーパーでは缶ビールが、よくこのような山積み状態になっていますよね。

インパクトがあってお客さんの目につきやすいし「あぁ!これ買おうと思ってたんだ」と思い出させる効果もあります。

これは「棚の外で商品を目立たせる」典型的なやり方。値段が同じでも、この山積みをするかしないかで売上に数倍の差が生まれます。

お客さんに店頭で「見つけてもらう」ことは、それくらいマーケティングにおいて重要な要素です。

価格

次に店頭において、マーケターが取り組む課題が「価格」です。

マーケターが店頭で実現したいと思っている価格は、必ずしも店頭で実現できるわけではありません。

製造業者が直接お客さんに売っているなら簡単です。しかし実際は、卸業者→小売業→お客さんという流れが一般的。店頭価格を最終的に決めるのは小売業です。

なのでマーケターは「最終的にお客さんにいくらで提供できるか」を考え、マージンなどを逆算して価格を決めます。

しかしながら卸業者や小売業者にも様々な要望や事情があります。必ずしもマーケターが望む価格で店頭に並ぶとは限りません。

しかも「価格」はブランディングの観点でとても重要。あまりに安すぎると「安っぽいブランド」と思われるし、高すぎては売れませんよね。

なので、いわゆる「価格戦略」をしっかりと定める。その戦略を実現するための具体的なプランを考える。さらにそれを徹底的に詰めていく、ということが大切になってきます。

商品の使用体験

次にマーケターが注力すべきは「商品の使用体験を制する」こと。

簡単にいうと「お客さんが商品を初めて購入してくれて、初めてその商品を使う瞬間のことをよく考えましょう」ということです。

お客さんが「初めて購入してくれた」ということは、その商品に対して少なからず前向きな「期待」をしているということです。

で、実際に使用した感想がお客さんにとって期待通りか、期待以上か、それとも期待を下回ったか。当然、これが「リピート率」に大きく影響するわけです。

さらに「期待以上だ!」と思わせて、ネットやSNSで口コミで広まれば、また新しく「初購入するお客さん」も増えるわけです。

だから「期待以上」と思わせるために、マーケターは「仕掛け」を用意する必要があります。

その「仕掛け」とは何ぞやというと「商品やサービスの研究開発に対して、消費者が喜ぶものをあらかじめ作らせること」。研究室のこだわりではなく「素人の消費者でも違いがわかる商品」を作ること。

当たり前の話ではあるものの、これ以上の対策はありません。

マーケティングに向いてる人

マーケティングに向いている人は、下記の通りです。それぞれ解説します。

  • リーダーシップが強い人
  • 考える力が強い人
  • EQが高い人
  • 精神的にタフな人

リーダーシップが強い人

リーダーシップの強い人は「全体を仕切る」とか「人の世話をする」のが大好きです。

マーケターの仕事は「人を動かすことで結果を出す」ことです。リーダーシップは、マーケターに限らずすべての「人を動かす仕事」でとても重要な素質になるからです。

考える力が強い人

「考える力」とは、いわゆる「問題解決能力」。マーケティングとは、色んなできごとや条件を考えた上で正しい方向性を導き出す頭脳労働です。

ずば抜けた知性など持ってなくても問題ないとはいえ、やはりある程度の知能は必要です。

EQが高い人

EQとは「Emotional Quotient(エモーショナル クォウシェント)」の略。

「心の知能指数」のことで、簡単に言うとEQの高い人は「空気を読んだり、人が何を考え、どう感じているのかを察する能力が高い」のが特徴です。

「消費者の声や情報から真意を読み解く」という意味で、EQの高い人はマーケターに向いています。

精神的にタフな人

マーケターは多くの時間を「不安」の中で過ごすことになり、数字で結果が出るまでは精神的に苦しいこともたくさん。自分がプライドを持って挑んだ自身満々の挑戦も、失敗に終われば絶望を味わうことになります。

そんな中で何度も立ち上がり、周囲からの冷たい目に耐えて、その失敗の原因を突き詰めて、自分の教訓にして前を向く。そんな強靭な精神力、打たれ強さを持つ人はマーケターに向いています。

マーケティングの「戦略」

戦略ってなにか

マーケティングにおいて大切なのは「戦略的思考」です。これはマーケティングに限らず、様々な場面で使える汎用的なスキルなので、身につけておいて損はありません。

で、「戦略的思考」って何かっていうと

「達成したい夢を叶えるために、自分の持っている様々な資源を、何に集中するかを選ぶこと」

です。

そもそもこのような戦略が必要な理由は「達成すべき目的があるけど、資源は常に不足しているから」です。だってそもそも目的がないなら、戦略は必要ありません。逆に資源が有り余っていても、戦略は必要ありませんよね。

資源が足りない中で目標を達成する。そのために「限られた貴重な資源をどれだけ無駄なく有効に使うか」を考えて、足りるように取捨選択することが「戦略」です。

「資源」について

上記でいう資源とは主に、下記6つのものがあります。聞いたことありますよね。

  • カネ。 → お金のこと。
  • ヒト。 → 人間と質と量。人的資源のこと。
  • モノ。 → 機会とか設備。物理的資源のこと。
  • 情報。 → 市場や消費者理解の情報。
  • 時間。 → 読んで字の如し。時間をかけないと実現できないこともある。
  • 知的財産。 → 代表的なのは「ブランド」。知財とも略される。

この中で最も大切な資源になるのが「ヒト」。唯一、6つの経営資源の全てを増減させたり、使いこなしたりできるからです。

これら6つの経営資源は、使う人が認識できていないと、使い物になりません。逆にいえば認識することで、増やすこともできます。経営資源は、ヒト次第で、増えたり減ったりします。

「ヒト」は最強の経営資源であるがゆえに、多くの企業において最も不足している資源です。

「いい戦略」ってなにか

「いい戦略」を見極めるモノサシとして代表的なのが、下記の4つです。

これらいずれかが強ければ「いい戦略」といえます。それぞれ解説します。

  • Selective(セレクティブ)。選択的かどうか?
  • Sufficient(サフィシエント)。十分かどうか?
  • Sustainable(サステイナブル)。継続可能かどうか?
  • Synchronized(シンクロナイズド)。自社の特徴との整合性は?

Selective(セレクティブ)。選択的かどうか?

「やること」と「やらないこと」をはっきり決めているかどうか。

やることが明確だと、やるべきことに資源を集中して投下できます。やらないことをはっきり決めれば時間短縮にも繋がります。

Sufficient(サフィシエント)。十分かどうか?

「やること」を決めたら、経営資源を投下しますよね。

その資源が「戦いに勝つための量として十分足りてるかどうか」です。

そのためにも、より「やること」と「やらないこと」を明確にするのが大事。Selective(セレクティブ)とSufficient(サフィシエント)は双子の関係です。

Sustainable(サステイナブル)。継続可能かどうか?

立てた戦略が「中長期で継続できる戦略か」です。

シンプルですが、中長期で維持しやすい戦略であれば、戦いにおいてより長く優位に立てますよね。したがって「いい戦略」ということになります。

Synchronized(シンクロナイズド)。自社の特徴との整合性は?

自社の特徴(強みと弱み)を有利に活用できているかどうか、です。

「自社の強みが、競合の弱みにハマる」という戦略が最も理想的。勝つ確率がググッと上がります。

マーケティングの「型」

マーケティングにも、基本の骨格となる「型」のような考え方があります。

その考え方ってどんなものかというと、下記の4つ。

  • 目的:Ovjective(達成すべき目的は何か?)
  • 目標:Who(誰に売るのか?)
  • 戦略:What(何を売るのか?)
  • 戦術:How(どうやって売るのか?)

目的:Ovjective(達成すべき目的は何か?)

最初にするのは「適切な目標設定」です。

まず「実現可能かどうか」。高すぎず低すぎないラインが理想的です。「無理とは思わないけど、高い目的だな」と思うくらいがいい感じです。

次に「シンプルかどうか」。みんなが理解できる、覚えられる、すぐ思い出せる、そんなシンプルな目的設定が大切です。例えば「ファミリー層の獲得」とか「来客数100万人増」とか。

そして「魅力的かどうか」。目的は結局「ヒト」がやる気を出さなければ達成できません。なので、みんなが奮い立つような、みんなが心から達成したくなくような目的を設定して、どんどん人を巻き込んでいくのが理想的です。

目標:Who(誰に売るのか?)

私は成功のカギというものはわからないが、失敗のカギは知っている。それはすべての人を喜ばせようとすることだ。

ビル・コスビー

これがWho(誰に売るのか?)の真髄。ターゲットは選ばなくてはなりません。

Who(誰に売るのか?)は、限られたリソースをどのお客さんに投下するか?ということ。その限られたリソースを「世の中の全ての人」に投下すれば、一人あたりのリソースは薄くなります。

それだと困りますよね。そうならないために、マーケターはターゲットを選ぶ必要があります。

戦略:What(何を売るのか?)

マーケティングの「型」におけるWhat(何を売るのか?)の部分は、自ブランドの「消費者価値」を選ぶことです。

「消費者価値」とは、本記事で前述した「ブランド・エクイティー」のこと。ブランドに対するイメージという意味です。

例えば、レクサスのイメージは「L」のエンブレム、フロントのあみあみ、高級車、高性能、お金持ちのイメージ。

じゃあ、レクサスを買う人ってどんな人か。たぶん「成功者としての優越感に浸りたい人」もしくは、「レクサスのエンジンとか、高品質な性能がマジで好きな人」に分かれますよね。中でも大半が「優越感」目的だと思います。レクサスを買っても、優越感ゼロだったら買いませんよね。

実際、レクサスのWebサイトを見ても、高級でラグジュアリーな傾向です。またレクサスを買うと「レクサスオーナーズカード」が渡され、全国のレクサスの店舗でそのカードを見せると無料で洗車をしてもらえます。洗車の間は、レクサスの店舗という上質な空間でコーヒーとか飲みながらくつろいで待ってられます。

…こういったところを見ると、レクサスが最も前のめりで売っているのは「優越感」です。

このような感じで「お客さんがそのブランドを選ぶ理由・買う理由」を客観的に分析して、明確にする。そして、その期待を裏切らないような商品の提供・売り方をしていくことが大切です。

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